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枕調節の適応疾患・症状

2022年10月19日 第14回 ゆる~く睡眠姿勢を語るサロン

 

「枕調節の適応疾患・症状」


今回、山田から過去に行った研究、枕調節の有効性について発表させていただきました。

以前からお話ししている内容ではございましたが、改めてご紹介させていただきます。

1.枕調節の有効性に関するカルテの後ろ向き調査


期間と対象:2004-2013年に当院に来院した頸椎疾患の患者でMRIを施行した症例のカルテを後ろ向きに調査した

410名 男性195名 女性215名 平均年齢50.5歳

 

■自覚症状と他覚所見における改善者数、改善者数率

上段:症状改善者数(棒グラフ)と改善者数率(折れ線グラフ)
下段:症状改善の有意差検定

 

■MRI所見別症状改善者数と改善者数率

上段:頸椎椎間板変性症
下段:頸椎椎間板ヘルニア

椎間板変性のみよりヘルニアがあるほうが症状が強いケースが多いと考えられるが、改善者数率はヘルニアの方が高かった。

 

■各症状の年代別比較 自覚症状

肩こり、頸部痛、肩上肢痛、頭痛、不眠に関しては50代以降改善者数率が上昇した。
枕調節の有効性は特に中高齢者で大きい可能性がある。

 

■身体化症状

これまでのカルテの後ろ向き調査の中で、頚椎症状のみならず頭痛、めまい、不眠など自律神経症状がよく改善する印象を持ちました。また日頃より当院に来院する患者様はここに示す「身体化症状」をよく訴えます。
そこでこれらの症状にフォーカスして次に研究をデザインしました。

 

2.頸部痛と身体化症状に対する枕調節の有効性の前向き調査


期間・施設:2016.4月から12月に当院および倉敷成人病センター、解析は東大22世紀医療センター

対象:頸部通・肩こりを主訴に来院しSSS-8のスコアが8点以上の中等度以上の症例

84名 男性24名 女性60名 平均年齢50.1歳

方法:頸部痛評価~Numerical Rating Scale(NRS)
身体化症状評価~ Somatic Symptom Scale-8 (SSS-8)

 

■結果 NSRとSSS-8

枕使用後2週間と3か月後の結果を示します。NRSおよびSSS-8とも有意に症状は改善しました。

 

■症状改善度・満足度

胃腸症状を除くすべての身体化症状が有意に改善しました。なお、枕使用後2Wという比較的短期間に症状改善していることがわかります。

 

まとめ


・枕調節の適応疾患・症状を示しました

・当院で行った研究結果からエビデンスを示せるものと、経験的な有効性のものがあります。

・枕は適応疾患というより適応症状というとらえ方で治療に使用します。

・今後も1つ1つエビデンスを示すことが望ましいですが、近年、臨床研究は倫理的にも費用的にもハードルが高い現状です。

・そこで是非お願いしたいのは、第一線の医療現場で診療にあたる先生方が1例1例安全性と有効性を確認いただければと思います。
その蓄積こそが大きな証明へと繋がっていくと考えます。

 

また今回、サロンに参加していただいている先生よりご質問をいただきました。

「理想的なまた健全な寝返りのため重要な整形外科枕ですが、その上に乗る頭の形状について山田先生はどのようにお考えでしょうか?」

このご質問をされた先生は小児の斜頸の治療を行っておられました。
寝返りが睡眠には重要であり、その寝返りを打ちやすくするには丸い頭の形のほうがいいと思うので丸い頭の人を多く作りたいとのお考えです。
また、

「産まれてすぐの6か月くらいまでの赤ちゃんの枕はそうすべきか?」とのご質問もいただきました。
これらのご質問について山田朱織枕研究所で行った後頭部の形状の分類をご紹介しながら、ご回答させていただきました。

 

A:かつて後頭部の形状の割合と、形状と睡眠中の頭の向きに関連性があるかを調べたことがありました。
その際、絶壁(後頭部が平)な人は仰臥位が多く、後頭部が突出している人は左右側臥位が多い、その中間のいびつな形では左右いづれかの平らなところで安定している寝ている傾向があるという結果になりました。
外来で患者様の頭を触っては、「〇〇向きで寝ることが多くないですか?」と聞いては、回答をもらうという、研究と呼べるクオリティではなく、少し調査した程度でした。
私の主張は、枕を適度な硬さで平らにすることがどんな頭の形の人にとっても左右に向きやすくする条件と考えます。
加えて言えば、左右どちらか向きで寝ることが多いという話はよく患者様から伺いますが、睡眠中の向きを決定する要素は2つ、身体条件と睡眠環境です。
身体条件は、頭の形や脊椎の側弯、頸部痛、肩痛、腰痛坐骨神経痛など痛みの左右差など。
睡眠環境は、どちらかに壁がある、パートナーが寝ている、TVがあるなどが影響します。

赤ちゃんの枕については研究データはないのですが、過去に0歳児のレントゲンを見たときに枕を使わなくても首の角度が約15度になっていることがわかりました。
少なくとも産まれてすぐは枕は必要なくて、自分で立ち上がるようになるくらい成長して体格が変わってきたときに何らかの枕が必要になってくると考えています。

 

その他いただいた質問としては

Q:狭窄症があり枕を使っていてしばらく調子が良かったのだが、最近腕のしびれが出たり調子が悪くなってきた。
枕の高さを下げると楽になったのだが、病状により枕の高さ調節はどのようにしたらいいか?

A:山田、枕の高さを変える時の条件としては、朝起きた時に枕が体から離れているとき高さ調節が必要と考えている。
高さが合わなくなる原因として考えられるのは、まずは体重の変化。5㎏以上変わった場合に高さに影響が出てくる。
高齢になってきて姿勢が変わり円背が強くなってきた場合には高さは高くする必要がある。
大きな体格の変化がない場合、高さが合わなくなるケースとして考えられるのは経年劣化による枕のへたり。この場合は高くすることが多い。
低くして楽になったとのことですがそれがほんとに体に良いのか1週間程使って様子をみてほしい。そして元々の高さから5㎜高くした場合も様子を見ていただきより楽な方でお休みいただくというのがよろしいのではないしょうか。

 

今回も様々なご意見ご質問をいただきありがとうございました。

是非、次回もゆる~くご参加くださいませ。

 

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