2022年6月15日 第12回ゆる~く睡眠姿勢を語るサロン
「肩こり」になぜ「枕」が効くのか ー神経根性頚部痛という考え方ー
今回は戸田先生から肩こりと神経根症、枕について発表がございました。
最近では神経根性頚部痛を唱える先生方が増えてきました。
肩こりの病態はあきらかではないが、頚椎症性神経根症が鍵ではないかと考えています。
神経根症の方にこそ枕が重要です。
肩こりとは
「後頚部から肩、および肩甲背部にかけての筋肉の緊張感を中心とする不快感、違和感、
鈍痛などの症状、愁訴」
・肩こりの病態はあきらかではない
・肩こりの自覚症状と肩周囲の筋硬度には関連があったという報告と、なかったという報告がある。
・不良姿勢、オーバーユース、心理ストレスなどが関わる
頚部痛(肩こりを含めての首から肩周囲の痛み)の原因
・椎間板性
・椎間関節性
・筋筋膜性
・k点原性
・神経根症
神経根性頚部痛
東北中央病院院長 田中靖久先生
・頚部神経根症治療
判定基準を作成
・頚部神経根症はほぼ前例で項部、肩甲部に痛みを生じる
・項部、肩甲部痛が上肢手の痺れ痛みに前駆して発生する
・70%の症例で、頚部痛が唯一の症状である時期があった
これが肩こりの本質では?
頚椎症(頚椎症性神経根症)
加齢変性+不良姿勢=頚椎症性神経根症
20代から椎間板軟骨変性は始まる。30~40代になり、レ線上の変形、骨棘ができて神経根の通り道が狭くなる。
そこに頚を反らすとか悪い姿勢をとると神経根を刺激して痛みが出る。
・レ線上、骨棘など頚椎症の所見がある
・頚椎を伸展、側屈、回旋で痛みが出る
→神経根性の頚部痛である!
枕の調節方法(Set-up for Spinal Sleep 法)
・側臥位
額・鼻・顎・胸骨を通る頭頚部の中心線と臥床が平行になるよう高さ調節
・仰臥位
仰臥位頚椎傾斜角が約15度
Set-up for Spinal Sleep 法による枕は、就寝時に頚椎を伸展・側屈させず、神経根の刺激を防ぐ枕である。
至適な枕による睡眠時の姿勢管理が頚椎症性神経根症の治療に有効。
枕が合っていないと動的な因子を出している。
至適な枕使用での各症状の年代別比較
頚椎症性神経根症からの頚部痛肩こり
ほとんどは神経根症の肩こりではないか。
だから肩こりにも枕が効く!
頚部痛、神経痛、肩こりの治療方針
・日中の姿勢管理
姿勢指導(マッケンジー法)
・夜間の姿勢管理
枕の指導
頚椎症性神経根症の説明
・レ線写真は加齢変性で当たり前のこと
・骨棘ができて神経の通り道が狭くなる
・首を反らしたり傾げたりするような動きで神経を刺激
→神経を刺激しないようにしたら早く治る
日中の姿勢指導
・首をぐるぐる回す癖はやめる
・首を反らしたり傾げたりしない
・胸を張り軽く顎を引き、姿勢をよくする。猫背にならない
・車の運転時、首だけでなく体ごと回して後ろを見る
・腕を伸ばしすぎたり、物を掲げる際は脇をしめて持つ
・上肢痛がつらいときは頭の上に腕を置く
→姿勢をよくして神経を刺激しないようにしたら早く治る
「寝ているときの姿勢はどうするの?」
→枕でコントロールしましょう
まとめ
中高年で(個体差あり)レ線で頚椎症所見があり首を反らしたり掲げたりして痛い患者は
上肢放散痛がなくても神経根症である。
加齢変性で椎間板が痛んでくるのは万人に起こる。
枕は対神経根症用の治療具だと思っている
神経根症は積極的に枕の指導をした方が良い。
今回の発表に関して様々なご質問をいただきました。
・神経根症で症状が強く出た場合に枕でどれくらいで改善してくるのか?
戸田:しびれに関しては1か月くらいしても取れるのは難しい。
痛みに関しては夜間痛で寝れないというような患者さんは枕を合わせるとその日から眠れるようになったりしてすぐ効果が現れる。
日中と夜間の姿勢指導のいいところは予防にも繋がる。
・枕を使っても症状が強く治らない場合はどれぐらいの期間を目安に手術を検討するのか?
戸田:3か月が目安ではないか。
カラーを付けたり牽引したりするが、枕というのがそもそも治療のカテゴリーに今まで入っていなかった。
そこまで手術が必要なほどの症例は少ないのではないかと考えている。
・神経根症がある方全員が首の角度15度でよくなるのか?
山田:過去の研究で年齢、性別、病態に関わらず症状が楽になった首の角度が約15度だった。
牽引でも角度が一律15度で引っ張っている。そこに共通点を見出している。
また玄関マット枕に関しても質問を頂きご解答しましたのでご紹介します。
・高さを合わせるときにめくった部分のタオルケットの処理はどうすればいいのか?
山田:めくった部分は邪魔なので全部めくってしまって、その分タオルを乗せる。もしくは
そのタオルケットは枕用で普段使わないんだったら切ってしまうのが一番良い。
今回もご参加いただきました先生方ありがとうございました。
多く質問もいただき、大変興味深いお話もお聞かせいただきまして今回も有意義な会になったかと思います。
次回もゆる~くご参加くださいませ。